映画

2021年7月19日 (月)

フロントランナー

実在の政治家ゲイリー・ハートのことは、この映画化の話を聞くまで知りませんでした。

見終わって思ったのは、時代が違えば異なる結果だったかもしれないということと、彼が大統領になっていたら、その後のアメリカはどうなっていただろうということ。
もちろん不倫はよくないけれど、奥さんとは実質別居状態だったようだし、最有力候補として政治理念が高く評価されていただけに残念とも言えます。

彼が戦線離脱していなければ、父ブッシュは大統領にならず、もしかしたら子ブッシュも選ばれなかったかもしれないし、順序が狂ってトランプも当選しなかったかも?なーんて、バタフライエフェクト的発想もしてしまいました。

トランプだって、もっと前のクリントンだって、スキャンダルをものともせずに職を全うしたし、ハート議員は逆に生真面目すぎたのかもしれません。家族への影響を重く受け止めた結果とも言えます。

多分本人も、政治家としての資質によってのみ判断されると信じて疑わなかったのかもしれませんが、もう少しプライベートの行動に慎重さがあっても良かったのかなと思います。

こんなスキャンダルに巻き込まれても、結局奥さんとは離婚することなく今年死別するまで添い遂げたようで、それだけに尚更この時の失脚は無念です。


The Front Runner」(2018年アメリカ)

2021年6月27日 (日)

カミーユ

実在のフランス人フォト・ジャーナリスト、カミーユ・ルパージュの伝記映画です。
彼女のことは知らなかったし、中央アフリカの内戦も記憶にありませんでした。

アフリカにはフランス語圏の国も多く身近なのでしょうが、とはいえ若い女性が単身渡って取材するなんて、勇気があるなと思います。
この国の惨状を世界に発信して知らせたいという使命に突き動かされたのかもしれませんが、危険地帯に乗り込んで行くなんて、いつもながらこういう人たちには感心します。

この映画でもう一つ考えさせられたのは、報道する側の姿勢について。世界の各地で紛争だの虐殺だの暴政だのがあって、世の中の関心はどんどん移っていき、それに応じて報道の対象も変えざるを得ないという現実を見ました。

カミーユは中央アフリカの仕事を認められて、ウクライナの取材をオファーされても、アフリカに戻ったけれど、本当に中央アフリカという国に魅せられたんですね。報道写真家という仕事が好きなだけなら、アフリカで会ったおじさんカメラマンのように、あちこち飛び回って取材するだろうし。
結果的に命を落とすことになったけれど、彼女はこの選択を後悔しなかったのではないかと思います。


Camille」(2019年フランス)

2021年5月29日 (土)

カリンカ

この事件のことは全く知りませんでしたが、実話なんですね。

1970年代当時、ドイツ人が罪を犯したと思われても自国民を守ってフランスに引き渡さないなんて風潮があったとは。性犯罪は厳しく取り締まる今なら考えられないと思うけれど、実際はどうなのかな。

娘を亡くした同じ身の上ながら、必死で追及しようとする父親と、目を背けてとにかく忘れてしまいたい母親の対比が、興味深いと思いました。男女の行動の差なのか、それとも母親は犯人の男性を招き入れた罪悪感みたいなのもあったのかもしれません。

主人公が、たとえ犯人と確信していたとしても、何の証拠もないうちに中傷のビラを撒いたりするのは行き過ぎの気もしましたが、そこまで追い詰めたからこそ結果的に余罪が明らかになってチャンスができたのかなとも思うし、難しいところですね。

犯人がドイツ人でも医者でもなかったら、もう少しスムーズに事件を解決できて、主人公がフラストレーションを感じることもなかったのでしょうが、どんどん妄執的になって2009年の事件を起こした時にはさすがに驚きました。
74歳ですよ! 時効ぎりぎりで焦ったっていうのもあるでしょうが、ほんと執念だなと思いました。


Au Nom de ma Fille」(2015年フランス)



2021年5月23日 (日)

博士と狂人

かのオックスフォード英語辞典の編纂に変わった二人の話です。実話なのが驚きで、だからこそ映画にはもってこいの題材とも言えます。

なかなか進まない辞典の編集人として新たに抜擢されたのは、学校は14歳で辞め学士号も持っていない、独学で言語学の優れた知識を習得したマレー氏。

それだけでもびっくりですが、辞典作成に一般の人々の助けを借りることになり、そこで協力したのが殺人罪で精神病棟に収監されている人物。ただ、囚人なので時間はあるから、手伝う気さえあれば役に立つのは分かる気がしました。

それまで全単語をまとめた辞典がなかった時に、一から作るのはそれだけで大変なのに、時代によって意味が変わるからと、その出典(引用)までも加えるという野心的取り組みで、気の遠くなるような作業だったことは容易に想像がつきます。

マレー氏を採用するまでにすでに20年も経っていたことを考え合わせると、完成に漕ぎ着けただけでも偉業と言わざるを得ません。

最初キャストを聞いたときに、ショーン・ペンが博士でメルギブが囚人かと勝手に憶測していましたが、映画を見た後では、この配役で合っていたかもと思います。


The Professor and the Madman」(2018年イギリス・アイルランド・フランス・アイスランド)

2021年5月16日 (日)

消えた声がその名を呼ぶ

先に見た「The Promise」に続けて、同じアルメニア人大虐殺をテーマにした映画を見ました。
あちらが、虐殺前の豊かな生活から徴兵され、逃げ、その後戦うまでを描いていたのに対し、こちらは迫害の話は最初のみで、生き延びた後に家族を探す話でした。

とにかくその執念が凄かったです。死んだと思っていた娘二人が生きていると知って、トルコからレバノンぐらいならともかく、キューバに渡ったことがわかって船員になって追いかけ、更にはアメリカに移動したと聞いて道路工事の作業員になって追いかける、まさに「母」ならぬ「娘をたずねて三千里」状態。

しかも、主人公がトルコで徴兵された後、喉を切られて殺されかけたので声が出ないものだから、捜索はさらに困難を極めます。
キューバ当たりで諦めても仕方ないと思うけれど、親たるもの、希望がある限り止められないということなんでしょうね。

父親役のタハール・ラヒムが、苦労して年月を経ても若い外見のままなのが、リアルさに欠けて気になりましたが、ラストで突然老けた感じになったのも不思議でした。

The Cut」(2014年ドイツ・フランス・イタリア・ロシア・ポーランド・トルコ)

The Promise/君への誓い

先日バイデン大統領が正式認定していた、アルメニア人大虐殺を描いた映画を見ました。

オスマン帝国って世界史で習ったけれど、13世紀末からずっと続いた国だったんですね。最盛期は17世紀らしいですが、衰退する国の威信をかけた結果がこの事件だったのだと分かりました。

そのやり方はまるでナチスのユダヤ人迫害と同じようで、第1次大戦中に協力関係にあった2国の類似性を見た思いでした。

宗教や考えの違いがあったとはいえ、長年同じ地域に暮らしていたのに、突然敵視され、家を追われ、虐殺されるなんて酷すぎです。
ただ悲しいことに今も世界各地で、違いを受け入れず敵対する風潮があり、これが珍しいと言えないのが残念です。

オスカー・アイザック扮するミカエルは架空の人物なのかもしれませんが、モーゼ山に立てこもって軍と戦った人たちがいたのは事実のようで、必死で生き残ろうとした彼らの勇気を讃えると共に、この虐殺で亡くなった150万ともいわれるアルメニア人の冥福をお祈りします。


The Promise」(2016年スペイン・アメリカ)

2021年5月15日 (土)

リチャード・ジュエル

現在ドラマ「マンハント」のシーズン1を見ているのですが、次のシーズンがリチャード・ジュエルと聞き、まずはこちらの映画を見てみることにしました。

アトランタ五輪の傍らで起きた爆弾事件のことは、ほとんど記憶になくて、ましてやリチャード・ジュエルのことは、クリント監督の映画化を聞くまで知りませんでした。

ジュエルは警察官になりたがっていたので、確かに英雄目的の犯人像に一致しますが、それだけで物証もないのに、どんどん犯人と確信されていくのは怖いなーと感じました。

メディアも第一報は、FBIがジュエルを捜査していると報じただけで、犯人と断定したわけでもなかったのに、第一発見者=爆弾魔の衝撃と共に情報が独り歩きして、ヒートアップしていく様子が本当に恐ろしかったです。

ジュエルが余りに可哀想だったし、いっそ爆弾なんか発見しなければよかったと思っちゃいそうなんて考えていたら、案の定、後半でジュエルが「次に爆弾を見つけた人が通報しなくなる」と言っていて、やっぱりそうだよねーと。

最後に無実が証明されると分かっていても、FBIの横暴さやメディアに踊らされる状況が、見ていてハラハラしました。

サム・ロックウェルが相変わらずグッドで、この人はホント最近いい役づいてるなと思いました。絶対欲目だけじゃないですよね!


Richard Jewell」(2019年アメリカ)

2021年4月29日 (木)

スペシャルズ!

お気に入り俳優レダ・カテブがヴァンサン・カッセルと共演した実話映画化作品を見ました。

コワモテなブリュノが自閉症の子供相手に優しい態度で接するというギャップが良かったし、マリクのほうは子供だけでなく青年たちの職業訓練もやっていて、社会に貢献している2人が本当に素晴らしいと思いました。

一方、資格のないブリュノが子供の受け入れを断らないがために、定員オーバーで当局の査察が入り、そもそも公的機関が正しく機能していればブリュノが受け入れる必要もないのに、フランス社会の抱える矛盾を浮き彫りにしていました。

行政の正式な認可を受けた組織だけで回せれば理想なのでしょうが、そんなきれいごとで済まないのが実情なのでしょうね。
日本の状況も全く知らないのですが、同じようなことになっていないのを願いばかりです。

エンドクレジットの映像は、実在の人たちなんですね。ヘッドギアをつけたり、馬と触れ合ったり、食事を提供してくれる人たちも皆モデルとなる人がいたことがわかりました。


Hors Normes」(2019年フランス)


2021年4月24日 (土)

ホース・ソルジャー

アメリカがとうとうアフガニスタンから軍を撤退させるというニュースを聞き、こちらの9.11後の対タリバン作戦の実話映画化を見ました。

クリス・ヘムズワース主演、ジェリー・ブラッカイマー製作というので、もっとエンタメ性を前面に押し出した作品かと思っていましたが、結構リアルな作りになっていたと思います。
劇中の特殊部隊が実在し、任務が成功して無事生還できたと分かっていても、やっぱりハラハラしながら見てしまいました。

アメリカ本土でのテロを目の当たりにし、使命感に突き動かされたのかもしれませんが、愛する家族を残して出兵する彼らを駆り立てるのは愛国心なのでしょうか。その勇気には敬服します。

邦題の(そして原作のタイトルでもあるらしい)ホース・ソルジャーとは、現地のドスタム将軍が戦闘に馬を使い、米軍兵士も馬に乗って一緒に戦ったからなんですね。
戦車やロケット砲なんか持っている敵を相手に地味な装備でも勝利したのは、まさに作戦勝ち、そして強い信念の賜物だと思います。


12 Strong」(2017年アメリカ)

ルイの9番目の人生

日本公開時の紹介文を読んで気になっており、今回機会があって見てみました。

やたら事故に遭うルイ少年の人生や運命がどうなるのか、興味をかき立てられました。
ペットのハムスターにラスプーチンって名付けるし、ヒトラーにも関心があるようだし、変わった少年ではあるものの、だからって度重なる怪我の理由は説明つかなくて。

物語がどこへ向かっていき、どういう結末を迎えるのか、最初は全く想像がつかず目が離せませんでした。
医者のパスカルと母親のナタリーの関係は容易に予測できましたが、昏睡に陥ったルイの病状との繋がりは不明でした。

後半なんとなく展開が読めてきましたが、それでもラストは完全に想定と異なりました。でも腑に落ちる結果かなと思います。

ナタリー役のサラ・ガドンは、この映画で初めて見たと思ったけれど、「ロイヤル・ナイト」のエリザベス王女だったんですね。
世界で最も美しい顔の4位に選ばれたそうで、最もハンサムな男に選ばれたパスカル役ジェイミー・ドーナンと、まさに美男美女カップルでした。


The 9th Life of Louis Drax」(2015年カナダ・イギリス)

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