映画

2020年9月27日 (日)

1917 命をかけた伝令

ストーリーはいたって単純で、第1次大戦中に伝令の任務を与えられた2人の兵士が、敵地を抜けて味方の陣地までたどり着く1日を追ったもの。全編ワンカット撮影が話題になっていました。

過去にもワンカットで撮影された「バードマン」などありますが、劇場とその周辺だけで展開するあちらと異なり、戦場を駆け抜ける間に、爆発はあるわ、戦闘機は落ちてくるわ、急流に流されるわで、一体どうやって撮影したんだろうと感心することしきりでした。
きっと緻密な計算を基にカメラを回し、映っていない裏側では大忙しでセットを変えたり仕掛けを準備したりしていたのかなぁと。

それに、メインの2人がひたすら歩いたり走ったりするだけなのに、音響の効果が見事で飽きさせず、普段映画で音響を意識することなどないのですが、今回ばかりはその大切さに気づきました。アカデミー賞で録音賞を受賞したのも納得です。(撮影賞と視覚効果賞もだけど。)

先ほど単純なストーリーと書きましたが、最初の頃に伝令の一人スコフィールドが、なぜかわからない理由で、故郷に帰りたくないとかメダルを人にあげたとか言っているのですが、共に伝令となったブレイクの影響で、最後は必死に目的地にたどり着き任務を全うしようとする意識に変わる様子が描かれ、それがすごくいいと思いました。

要所要所で登場する上官たちの、コリン・ファース、マーク・ストロング、ベネディクト・カンバーバッチらも印象的。
また、ラストで出てくるブレイクの兄は、今見ているドラマ「ボディガード」のリチャード・マッデンでした。


1917」(2019年イギリス・アメリカ)

2020年9月26日 (土)

スキャンダル

今年4月に見たドラマ「ザ・ラウデスト・ボイス」のセクハラ・スキャンダル部分に焦点を当てた映画ですが、グレッチェンではなくケリーを中心に描かれていました。

しかもセクハラ訴訟自体についてはあまり説明されず、グレッチェンの訴えで事件が明るみに出た結果、当時のスター女性キャスターでトランプの大統領選討論会の司会も仕切ったケリーが、どう対応したかを見せていました。

先にドラマを見ていなかったら、この訴訟の経緯が分からなくて、ついていきにくかったかもしれませんが、きっとアメリカでは事件当時に散々報道されて誰もが事情を知っているので、改めて詳細を見せる必要もないという判断だったのでしょうね。

ドラマの後で見たせいか、私としては具体性に欠け肩透かしの感じがしなくもありませんでしたが、ドラマを見ていなかったら、これはこれで内幕ものとして純粋に楽しめたのかと、悩ましい限りです。

このテレビ界の大物ロジャー・エイルズを皮切りに、映画界のハーヴィー・ワインスタインのセクハラも明るみになったし、引いてはMe Too運動にもつながったかと思うと、グレッチェンの勇気に感謝します。

FOXのCEOマードックの息子ラクラン役で、今見ているドラマ「サバイバー」でも重要な役どころのベン・ローソンが出ていたのですが、もう一人の息子ジェームズ役はジョシュ・ローソンという名前で、演じる俳優同士も実の兄弟だと知りました。


Bombshell」(2019年アメリカ)

2020年9月13日 (日)

女神の見えざる手

アメリカ公開時に気になっていたのに、すっかり積ん録になっていた映画(そういうの多いけど)を、ようやく視聴しました。

ロビイストって議会の根回しの人としか思っていなかったけれど、あんな風に賄賂や脅しが行われているものなのでしょうか。銃規制の問題は確かに大きいので、力が入るのは分かるのですが。

エリザベスがあそこまでできるのがすごいけれど、だからこそロビイストとして抜きんでた存在になれたのかなと思います。

そんな彼女が銃規制側についたのは、エズメと同じようなモチベーションがあったのかと推測していたけれど、結局「勝つ」ことに拘っただけなのでしょうか。あまりに有能で全て成功してしまうので、不可能に挑戦したくなったのかもしれませんが。

欲目かもしれないけど、マーク・ストロングがエリザベスを引き抜くロビイスト会社のCEOで、ここでも相変わらずいい味。

また、リズについて移籍せず元の会社に居残る部下役のアリソン・ピルも、「ニュースルーム」と同様、印象に残りました。
エズメ役のググ・バサ・ローは、「マザーレス・ブルックリン」で見たばかりです。


Miss Sloane」(2016年フランス・アメリカ)

2020年9月 6日 (日)

マザーレス・ブルックリン

大好きな俳優の一人エドワード・ノートン(「僕たちのアナ・バナナ」)が監督・脚本・主演ということで、アメリカ公開時から気になっていた作品です。

1950年代のニューヨークが舞台で、私立探偵のライオネルが、恩人の死を捜査して街の悪事を暴きだすというストーリーだけでも面白いのですが、彼がチック症で、緊張すると変なことを叫んだりするので、時にハラハラしながら見ていたら、すっかり引き込まれました。

ノートンの人脈なのか、脚本に魅かれてなのか、名だたる俳優が勢ぞろいしていましたね。ブルース・ウィリス(ウェス・アンダーソン繋がり?)にアレック・ボールドウィン、ウィレム・デフォーなどなど。私の好きなダラス・ロバーツも出ていたし。

バックに流れるジャズも心地よく、硬派な感じのクライム・サスペンスがとてもいい雰囲気で、デニス・ルヘイン(「夜に生きる」)やジェームズ・エルロイ(「L.A.コンフィデンシャル」)が原作の映画と同じ香りがしました。

タイトルの意味が明らかになる後半のエピソードも良かった! ジョナサン・レセムの原作も読んでみたくなりました。


Motherless Brooklyn」(2019年アメリカ)

2020年8月24日 (月)

俺たちポップスター

アメリカで公開された時にはさして関心がなかったのですが、日本公開時の紹介記事を見て興味を引かれ、今回無料配信されていたのを機に見てみました。

ジャスティン・ビーバーの音楽ドキュメンタリー映画「ネバ―・セイ・ネバー」をもじったような原題からもわかる通り、アイドル歌手コナーの新曲プロモーション用ドキュメンタリーという設定です。

とにかく大物ミュージシャンの本人役出演が大量で、アダム・レヴィーンやP!NKとのデュエットはもちろん、マライア・キャリーやアッシャーらのインタビュー、シールに至っては狼に襲われたり(⁈)、笑えて楽しめました。

コナーの専属シェフにはジャスティン・ティンバーレイク。料理しながら歌うシーンでは、「歌手じゃないんだから」とダメ出しされ・・・。

下ネタも多く、基本おバカなコメディではあるのですが、ボーイズ・グループの友情と決別といったドラマな要素もあり、軽いノリで見られるパロディ映画としては期待以上でした。


Popstar: Never Stop Never Stopping」(2016年アメリカ)

2020年8月23日 (日)

名もなき生涯

過去にも「シン・レッド・ライン」や「トゥ・ザ・ワンダー」「聖杯たちの騎士」などの記事を書いた、大好きな監督テレンス・マリック。
今回は実話の映画化ということで、どうかなと思いましたが、モノローグを多用する叙情的な語り口は変わらずでした。

「ハクソー・リッジ」でも主人公は人を殺さない選択をした衛生兵でしたが、こちらは病院で働く提案がありながら投獄されてしまったのは、ヒトラーに忠誠を誓うことができなかったからで、そこがアメリカ兵との違いですね。

この時代に戦うことを拒否するだけでも勇気がありますが、それを貫き通したのがすごいと思います。強い信仰に裏打ちされたものかもしれないけれど、教会の司教でさえも表立って反対できない風潮のなかで、どうやって自分を保てていられたのだろうと感心しました。

実話なのですが、マリックの手にかかると幻想的で何だか現実に思えませんでした。下からのぞき込むような構図のカメラワークが多く、見上げて映る大きな空が、悲惨さを薄れさせるような気がしました。

フィクションと思えば十分見応えのある映画だったと思うのですが、歴史を伝える目的だとするとちょっと弱い気がして、それが残念です。
特に、マリックの作風を好まない人には、3時間の長丁場を見続けるのは辛いかもしれません。


A Hidden Life」(2019年アメリカ・ドイツ)

2020年7月26日 (日)

黒い司法 0%からの奇跡

アフリカ系の若き弁護士が差別に基づく裁判に闘いを挑む実話ということで、「マーシャル」を思い起こしましたが、こちらは逮捕が1987年、裁判は1993年と、ごく最近の話であることに驚きました。

さすがに黒人だからというだけで闇雲に逮捕したわけではありませんが、嘘の告発を信じて証拠を調べもせずに死刑にするなんて、そんな司法制度がまかり通っていたとは恐ろしすぎます。

間違いを認めたくないという保身もあったのかもしれませんが、他からやって来た新米弁護士が取り上げるまで、地元の検察も問題にしていなかったことに、事態の深刻さを実感します。

最近もミネアポリスで白人警官の行き過ぎた行為が大きな事件になっていましたし、一体いつになったらこの状況が変わるのだろうと考えてしまいました。

日本で差別がないとは言いませんが、アメリカでマイノリティが味わうのと同じような社会ではないと思うので、この根深い問題を完全に理解するのは難しいです。


Just Mercy」(2019年アメリカ)

永遠の門 ゴッホの見た未来

最近の伝記映画は、人生のごく一部を切り取った作品も多いのですが、これはパリから南仏へと渡り、ゴーギャンと暮らし、彼が去った後で精神病棟に入れられ、最後に静養の地で亡くなるまでの後半生をほぼ網羅していました。

芸術家は誰しも繊細な一面を持っているのでしょうが、ゴッホの場合、南仏で過ごすことであの数々の名画が生まれた反面、孤独に苛まれることもなかったのだろうかと思ったりしました。

特に、同じセリフが繰り返されるのは、ゴッホの頭の中で何回もリピートされて、彼が狂気に向かっていく様を表しているのかなと考えました。

また、画面の色づかいや、急に白黒になったりぼやけたり、真っ暗な中にセリフだけだったり、凝った映像が多くて、それは監督のジュリアン・シュナーベル自身が画家でもあるせいなのでしょうか。
すでに何回も映画化されているゴッホを改めて描こうとした理由も知りたいです。

ゴーギャン役のオスカー・アイザック、弟テオ役のルパート・フレンドの他、マッツ・ミケルセンやマチュー・アマルリックがちらっとだけ(でも重要な役で)出ていましたが、ヴァンサン・ペレーズに至ってはどこにいたのか分かりませんでした。


At Eternity's Gate」(2018年イギリス・フランス・アメリカ)

 

2020年7月25日 (土)

ブルックリンの恋人たち

期待せずに見始めたのですが、情熱的なラブロマンスではない静かな淡々とした恋愛が好感持てました。どちらかというと、事故に遭った弟の目線を姉が追体験するドラマに主軸があり、それが感動的で良かったです。

姉と親しくなるミュージシャンも派手ではなく、辛い境遇にある彼女を優しく見守り、一緒に過ごす時間も緩やかに流れ、その中で音楽が随所に盛り込まれるところも心地よく感じました。

ラストがきれいにすっきり終わらないのは、好き嫌いが分かれるところかもしれませんが、自分なりに解釈できるし、私はポジティブに捉えられてグッドです。

すっかり映画スターのアン・ハサウェイですが、こういう小品でも魅力を発揮できるすごい女優さんだなと思います。ジョナサン・デミがプロデュースに名前を連ねているせいか、「レイチェルの結婚」を思い出しました。

相手役のジョニー・フリンという人は、今まで印象に残ったことがなかったけれど、「ジーニアス」で若きアインシュタインを演じていた人なんですね。
彼自身ミュージシャンらしく、劇中歌もすべて本人が歌っていて、とても雰囲気がありました。


Song One」(2014年アメリカ)

2020年5月28日 (木)

イエスタデイ

設定が面白いなと思って、アメリカ公開時から(イギリス映画ですが)気になっていた映画でした。
わずかな大停電の直後から、あのビートルズを誰も知らない世界になってしまい、売れないミュージシャンだったジャックが、自分の曲と偽って一躍スターになってしまう話。

「そもそもなぜビートルズだけ? ザ・ローリング・ストーンズは? レッド・ツェッペリンは?」と思っていたところ、ジャックも同じように考えたようで、ザ・ローリング・ストーンズをネット検索したら、ありました! でも、次に存在を調べたのがチャイルディッシュ・ガンビーノ⁈ なぜに?

ちなみに他にも、オアシスが存在してなかったり、音楽ばかりかコカ・コーラが無くてペプシだけだったり、後から続々と「実はなかった」アイテムが出てきて笑えました。

リアルなのは、有名曲でも細かい歌詞を覚えてなくて必死で思い出そうとしてたとこ。それと、シチュエーションに合わせて曲をリリースできるのは、ビートルズより役得ですよね。太陽一杯のカリフォルニアで「Here Comes the Sun」を歌ったり、モスクワの公演で「Back in the U.S.S.R.」を突然演奏したり。果ては、エド・シーラン(本人役)との即興対決で、「The Long and Winding Road」を選んだりしていました。

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