映画

2022年6月21日 (火)

男と女 人生最良の日々

ジャン=ルイ・トランティニャンの訃報を聞き、遺作となったこちらの作品を見ました。

最初は、トランティニャンがすごく年寄りくさく見えたのですが、それは老人ホームで過ごし生きる気力もない主人公という役柄だったから。
彼の夢というか幻想の中では、ホームを飛び出し、生き生きとして元気なおじいちゃんでした。

とはいえ、トランティニャンも相手のアヌーク・エーメも、当時それぞれ88歳と87歳なので、座って会話する場面ばかりで、ドライブに出ても車の中で話していました。

また、オリジナルの「男と女」からのフッテージも多用されて、主役の2人に動きがなく展開に乏しい穴埋めか?なんて穿った見方もしましたが、回想シーンのおかげで、彼の可愛らしい笑顔が昔のまんまだと分かりました。

静の2人に対する動の役割を担ったのは息子と娘。老いた父親の昔の恋人を探し当てる過程で再会した元同級生が、思い出の砂浜でデートするところなんか、見ているこちらまで感傷的になりました。
この息子と娘を演じている俳優は「男と女」の時の子役で、50年後に同じ役をやるなんてすごいなと思いました。

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2022年3月22日 (火)

愛は静けさの中に

先日名優ウィリアム・ハートが亡くなりました。「蜘蛛女のキス」や「白いドレスの女」、「ブロードキャスト・ニュース」など、様々な役柄を演じてきた彼は、最近では「ラスト・フル・メジャー」を見ましたが、今年のアカデミー賞で話題の「コーダ あいのうた」のマーリー・マトリンが共演していることもあって、彼を偲ぶ作品としてこちらの映画を選びました。

マトリン演じるサラが本当に綺麗だし魅力的で、ジェームズが惹かれたのも良くわかります。と同時に、健常者とのカップルの大変さもつくづく感します。

例えば、以前見た「サウンド・オブ・メタル」では、主人公は大人になってから突然聞こえなくなったので、元の自分に戻る生活を求めますが、聞こえないのが当たり前の人にとっては、そもそも目線や発想が異なり、健常者が手助けしようと思っても、本人の望みではなかったりすることに気づかされます。

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2022年3月21日 (月)

モーリタニアン 黒塗りの記録

グアンタナモで人権侵害となる拷問が行われていたのは聞いていましたが、想像以上でした。

まず、他の逮捕者の証言を信用して証拠も精査しないまま何年も拘束し尋問し、容疑も伝えられず弁護士もつけてもらえずにいたことに驚きました。
しかも、独裁国家や法整備の整っていない途上国ならいざ知らず、まさかアメリカがと思いますよね。

確かに9.11後に成果を上げたかったのも理解できるし、テロリストに復讐したい気持ちも分からなくはありませんが、普通の犯罪捜査でも行き過ぎた自白の強要があったり、BLM運動が起こったきっかけでもある黒人に対する警官の不当な暴力を考えると、公正や正義という言葉はもはや幻想なのかと思ってしまいます。

スラヒが怪しく見えたのは事実で、携帯の履歴を消したり、アルカイダの訓練に参加したり、知り合いの知り合い(この人がテロリストだったみたい)を家に泊めたといったことはあったのですが、一番の問題は、違法と認識した上で敢えてアメリカ国外の施設で拘束・拷問を行い、しかもそれを隠蔽しようとしたことだと思います。

そんな中、スラヒの弁護に当たったナンシーが、ジャーナリストの取材に答えて、テロリストを守るためではなく、あなたや私を守るためなのだと言った言葉が非常に印象的でした。


The Mauritanian」(2021年イギリス)

2022年3月 6日 (日)

タミー・フェイの瞳

アメリカでは知らない人などいない有名夫婦だったのかもしれませんが、私はこの映画が作られるまで全く知りませんでした。

まず驚いたのは、少なくとも牧師の資格を持っているかと思ったのに違って、テレビ伝道師は誰でもなれちゃうんだなぁってこと。
もちろん人一倍信仰心はあって、聖書の言葉も熟知しているし、中退するまで大学で神学の勉強はしていたのですが。

巧みな話術で人を惹きつけ、これが新興宗教だったらカルト教団の教祖っぽいけれど、キリスト教なら人気伝道師として成功できるんですね。

映画がそういう作りになっているせいか、資金流用の事件も少し同情してしまい、大金を扱った経験も経営の才覚もなくお金がどんどん入ってきちゃって、個人のお金と区別をつけるという感覚も持ち合わせていなかったのかなーと考えてしまいました。

タミーは、保守的な信者の多い中にあって、同性愛者やエイズ患者も分け隔てなく接し、博愛精神を地で行っていた人なのにも感心しました。
本人に似せたジェシカ・チャステインは、全く面影がありませんでした。


The Eye of Tammy Faye」(2021年アメリカ)

2022年2月20日 (日)

夜の大捜査線

先月、名優シドニー・ポワチエが亡くなりました。フランス映画月間中だったので、今月になったらこの映画を久々に見ようと心に決めており、今日実現しました。

30年前に初めて見た時には、アメリカの人種問題について知ってはいたものの、今ほどの知識はなかったし、単純に話として面白いと思っていました。最初は反発しながらもバージルの協力を得ていた署長が、殺人事件の捜査に詳しい彼の指摘を受けて渋々容疑者を釈放したりする様子が爽快だったし。

年を経るにつれ、差別の根深さだけでなく、田舎署長の心境なども深く理解できるようになり、この作品の凄さがより分かってきました。

白人を殴り返すシーンも以前は何気なく見ていましたが、当時の黒人は皆驚いたという話を後から聞き、今回特にそのシーンに注目しました。
署長もバージルの行動に驚いたでしょうが、何もせず見て見ぬふりをした時点で、彼の態度の変化が見て取れました。

そして、2人で署長の家で語らうシーン。白人優位と思っていたのに黒人に同情されそうになり、抵抗する署長の姿に悲哀を感じました。

アカデミー賞で作品賞を受賞したのも納得の名作です。
ちなみに、主題歌を歌っていたのは、レイ・チャールズでした。


In the Heat of the Night」(1967年アメリカ)

2022年2月19日 (土)

プロミシング・ヤング・ウーマン

昨年のアカデミー賞でノミネートされていた時から、気になっていた作品です。

キャリー・マリガンは最も好きな女優の一人ですが、過去に複雑な思いを持ちながら、半分投げやりな人生を送り、唯一ささやかな復讐に喜びを見出しているキャラクターを見事に演じていました。

せっかく新しい出会いに前向きに生きようと決意したのに、ひょんなことから過去に引き戻されていくのは、運命のいたずらということなのでしょうか。
かなり想定を超える展開で、アカデミー賞で脚本賞を受賞したのも納得です。

何でこんなタイトルかと思ったけれど、将来を有望視された若い女性の行く末が、ってことなんでしょうね。
脚本を書き監督も務めたのは、自らも女優のエメラルド・フェネルという人ですが、どこからこんな話を思いついたのかと感心しました。


Promising Young Woman」(2020年イギリス・アメリカ)

2022年1月31日 (月)

スーパーノヴァ

私の好きなロードムービーということもあり、コリン・ファースとスタンリー・トゥッチのゲイ・カップルが妙にはまっていて(2人ともストレートなのにね)、さすが名優の演技に何度もホロリとさせられる作品でした。

作家のタスカーは認知症と診断され、長年のパートナーでピアニストのサムと、キャンピングカーで旅に出ます。
単に美しい景色の田舎をドライブしているだけと思っていたら、タスカーの記憶があるうちに、2人の思い出の場所をたどったり、サムの実家に立ち寄ったりしていました。

愛しているからこそ負担になりたくないという考えと、愛しているからこそ最後まで一緒に過ごしたいという思いの、どちらの気持ちもよくわかるし、他の病気以上に本人も見ているほうも辛いというのが、認知症の初期段階なのかなと思います。

少し前に見た「ファーザー」の時もそうでしたが、自分の親がそうなった場合だけでなく、自分自身に起こった場合のことも考えてしまいました。

ラストはあいまいな感じで、もしかしたら見ている人に解釈を委ねたのかもしれませんが、そんな終わり方もまた良、でした。


Supernova」(2020年イギリス)

2022年1月30日 (日)

約束の葡萄畑

もう1本、ギャスパー・ウリエル出演作を見ました。こちらは2009年の見逃しシネマで、しかもニュージーランドと合作の、英語の映画でした。

先日見た「おかえり、ブルゴーニュへ」と同じくワイン畑が舞台の話ですが、1808年という時代設定で、主人公の小作人に天使がワイン造りを指南してくれるというファンタジーっぽい作品で、ウリエルはこの天使を演じています。

天使が1から10まで教えるのかと思ったら、そうではありませんでしたが、でもソブランの才能そのものが実は天使の授けたものだったかもしれず、よく分かりませんでした。

でも、好きな女性と家庭を持ち、その一方でオーナーのオーロラにも惹かれ、貧しい生活から脱却し、成功して奢る様子もあったものの、総じていい人生を送れたのは、天使のおかげってことなんでしょうね。

最後のほうは予想外の展開でしたが、天使もワイン造りの楽しさを享受したかったのかなーということで。

若いギャスパーが美しく魅惑的でもあり、改めて今は亡き俳優を偲びました。


The Vintner's Luck」(2009年フランス・ニュージーランド)

エヴァ

ギャスパー・ウリエルの出演作は、これまでにも「ロング・エンゲージメント」や「ハンニバル・ライジング」「サンローラン」「たかが世界の終わり」など記事にしてきましたが、先日スキー中の事故で急逝したと聞き、見逃していた作品を追悼のために視聴しました。

最初のほうは、ストーリーを追うよりも、彼の姿を見ながら「亡くなったのねー」とずっと考えていました。取り立てて彼のファンという訳でもなかったのですが、37歳という若さで、まだまだこれからの役者だったのに、残念でなりません。

主人公のベルトランは、訪問先の老齢の作家が急死し、彼の遺作を盗んで自分の名前で発表するのですが、ばれずにいられるのが不思議でなりませんでした。
文体にはそれぞれクセがあるし、よくあるのはスランプに陥ったベテラン作家が教え子の作品を盗むとかですが、そもそもベルトランは作家でさえありませんからね。

同世代の恋人がいながら年上の高級娼婦に惹かれるのも、そう多くはないと思うけれど、エヴァも、演じるイザベル・ユペールも、十分魅力的で、謎めいた雰囲気に興味を覚えたのも分かります。それに、偽りの才能を信じる恋人に心を開ききれないというのもあったのでしょう。

盗作による名声を得た男の行く末なんて見えている気がしましたが、思ったのとはちょっと違うエンディングでした。


Eva」(2018年フランス)

2022年1月23日 (日)

シャイニー・シュリンプス!

弱小チームを勝利に導く、よくあるスポ根映画かと思いましたが、ゲイに対する差別発言が理由でゲイの水球チームのコーチをさせられるっていうのがちょっと違いました。

いくら実力ある水泳選手でも、水球のコーチなんてできるのかなと思うけれど、アマチュアのチームだから何とかなるのでしょうか。

チームメンバーにそれぞれ事情があって、病気を抱えていたり、家庭があるのに水球に打ち込んだり、同じゲイなのにトランスジェンダーは受け入れなかったり、なかなかカミングアウトできない人もいました。

そんな悲喜こもごもに時折ホロリとさせられながらも、基本はコメディなので笑えるシーンも多く、楽しんで見ることができました。
ただし、お尻にライアン・ゴズリングのタトゥーを入れるのは止めてー、と思いましたけれどね。

実在のゲイ水球チームに着想を得たらしく、ラストに写真が出ていたのはその人たちですね。
昔見たタイのバレーボールチームの映画「アタック・ナンバーハーフ」を思い出しました。

差別発言でチームのコーチとなる主人公は、「アート・オブ・クライム」のニコラ・ゴブです。


Les Crevettes Pailletées」(2019年フランス)

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