名もなき生涯
過去にも「シン・レッド・ライン」や「トゥ・ザ・ワンダー」「聖杯たちの騎士」などの記事を書いた、大好きな監督テレンス・マリック。
今回は実話の映画化ということで、どうかなと思いましたが、モノローグを多用する叙情的な語り口は変わらずでした。
「ハクソー・リッジ」でも主人公は人を殺さない選択をした衛生兵でしたが、こちらは病院で働く提案がありながら投獄されてしまったのは、ヒトラーに忠誠を誓うことができなかったからで、そこがアメリカ兵との違いですね。
この時代に戦うことを拒否するだけでも勇気がありますが、それを貫き通したのがすごいと思います。強い信仰に裏打ちされたものかもしれないけれど、教会の司教でさえも表立って反対できない風潮のなかで、どうやって自分を保てていられたのだろうと感心しました。
実話なのですが、マリックの手にかかると幻想的で何だか現実に思えませんでした。下からのぞき込むような構図のカメラワークが多く、見上げて映る大きな空が、悲惨さを薄れさせるような気がしました。
フィクションと思えば十分見応えのある映画だったと思うのですが、歴史を伝える目的だとするとちょっと弱い気がして、それが残念です。
特に、マリックの作風を好まない人には、3時間の長丁場を見続けるのは辛いかもしれません。
「A Hidden Life」(2019年アメリカ・ドイツ)
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