めぐり逢う朝
今日はこちらの見逃しフレンチシネマです。
17世紀のフランス。老齢となった宮廷音楽家のマレは、自分が師と仰いだサント=コロンブのことを回想します。
師は類いまれなヴィオール奏者でしたが、亡き妻の思い出を胸に2人の娘と隠遁生活を送っていました。その才能を聞き及んだ王の命で宮廷に呼ばれても受けなかった彼の元に、ある青年が弟子にしてほしいとやってきます。この青年こそがマレでした。
最初は「アマデウス」のモーツァルトとサリエリのような、才能ある者とそれを妬む者の陰謀渦巻くストーリーかと思っていたのですが、そういう風でもありませんでした。
確かにマレは野心家だったし、音楽家というより演奏家だったかもしれませんが、ある種の才能を感じたからこそ、サント=コロンブは弟子になることを許したのでしょうし、娘のマドレーヌも彼に魅かれたのでしょう。
そもそもマレが野心的になったのだって、靴職人の息子だった彼が予定外に王の合唱隊に召され、幼くして宮廷生活に味を占めたのが始まりなのでしょうし、彼だけを責められません。
それに、マドレーヌとの関係も、決してマレが彼女を誘惑したわけではなく、マドレーヌの方が積極的で、自ら父に学んだことをマレに伝授し、彼が宮廷音楽家になる道を助けました。マレも、宮廷に行ったとたんにマドレーヌを捨てたのではないし、彼なりにマドレーヌを愛しく思っていたのだと思えます。
邦題も詩的なタイトルでグッド! 原題の「Tous les Matins du Monde(この世のすべての朝)」は、原作小説中の「この世のすべての朝は一度きり」、すなわち「毎日一つとして同じ朝はない」という意味の文章からきているそうです。
若き日のマレを演じるのは、私の中では、やはり同じ年(2008年)に急逝したヒース・レジャー(「ダークナイト」)と似た雰囲気を持つ印象の、今は亡きギョーム・ドパルデュー。老齢のマレ役は実父のジェラール・ドパルデュー。彼と「シラノ・ド・ベルジュラック」でも共演しているアンヌ・ブロシェがマドレーヌ役で出ています。
監督は、私の好きなジャン=ユーグ・アングラード主演で生涯トップ200の1本でもある「インド夜想曲」の、アラン・コルノーです。
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