ル・アーヴルの靴みがき
こちらもフランス語の映画ながら、フィンランドの監督アキ・カウリスマキの作品です。
フランスの港町ル・アーヴルで靴みがきとして生計をたてているマルセルは、妻のアルレッティと犬とつましく暮らしています。アルレッティが入院してしまい、しばらく一人で過ごすことになったマルセルは、ある日家の中に黒人の少年が隠れているのを見つけます。その少年イドリッサは、アフリカから密入国して逃げていたのを、マルセルが見つけて食べ物を与えたので、こっそりついてきたのでした。
カウリスマキは、「マッチ工場の少女」や「過去のない男」など、普通の人々の日常を描きながらもペーソスあふれる作風でけっこう好きな監督ですが、ここでも何気ない毎日の中で起きた、密入国という異色な出来事を、独特のカメラワークで綴っています。
移民大国のフランスですが、コンテナが大量に行きかう港のあるル・アーヴルならではの設定ですよね。靴みがき仲間のベトナム人を始めとして、近所の人たちがマルセルに協力的なのも、移民が近しい立場にいる環境だからなのかなと思いました。
もちろん、マルセルの人柄や、妻が入院したことによる同情からもあったのかもしれませんが、パン屋のイヴェットはともかく、八百屋のジャン・ピエールまで協力するのは面白く思いました。
マルセルが、最初は地味で目立たない感じなのに、イドリッサの祖父を探しにカレーまで行き、自分はアルビノ(白い肌の黒人)の弁護士で記者だと大胆に身分を偽った辺りから、その変貌に驚き、イドリッサを救いたい一心で出てくる力だとしたらすごいなと思いました。
でも、奥さんが入院していなくて幸せなままだったら、ここまでイドリッサに入れ込まなかったかもしれないし、人助けが回りまわって奥さんの病気の完治に繋がるとの漠然とした希望もあったのかなと思ったりも。
エンディングはちょっと予想外ではありましたが、すべてがファンタジックな物語と思えば、それもまた良しと感じられたし、カウリスマキ監督らしいとも思えました。
カウリスマキ作品の常連であるマルセル役アンドレ・ウィルムとアルレッティ役カティ・オウティネンの他、密入国の少年を追うモネ警視には、「ロング・エンゲージメント」のジャン=ピエール・ダルッサン。そして、少年を見つけて密告する男には、「大人は判ってくれない」などのアントワーヌ・ドワネルことジャン=ピエール・レオでした!
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