ローマ法王の休日
クリスマスイヴだったので、カトリック教を題材にしたこちらの作品を選定。でも、厳粛な話ではなく、コメディです。
前法王の逝去により始まったコンクラーベ。有力候補の間で票が割れ、再投票の結果、全く候補外だったメルヴィルが選ばれます。予想だにしなかった選出に驚いたメルヴィル新法王は、重責に耐えかね逃げ出します。
コメディとはわかっていても、こんなに終始笑いっぱなしとは思いませんでした。カトリック教のお膝元イタリアで、こんなふざけたコメディを作っていいの?っていうくらい。シリアスの極地である宗教、しかも法王の選出というシチュエーションとのギャップが大きくて、余計に笑えたのかもしれません。
まず、コンクラーベの部屋でいきなり停電になって転ぶ枢機卿が出る冒頭から、隣の人の投票用紙をのぞこうとする枢機卿あり、「選ばれませんように」と願いながら投票する枢機卿あり。
そして選ばれたメルヴィルはパニック発作に襲われたようで、新法王が民衆の前に姿を見せない言い訳として、祈祷に入ったと報道官は発表...。
メンタルケアのために精神科医が呼ばれるも、全枢機卿の立会いの下で面談するしかなく、より良い診察のためにメルヴィルを知らない外部の医者を勧めます。しかし、外出した隙に、メルヴィルは逃げてしまうわけです。
邦題の「休日」というのが最初引っかかっていましたが、重責から逃れてローマの街なかに繰り出す様は、確かに「ローマの休日」に似たものがあります。ただし、ジャーナリストと楽しく過ごす王女と異なり、メルヴィルは苦悩の末にさまようだけですが。
この法王の不在を知らない枢機卿たちが、先の精神科医を交えて時間をつぶす様子が笑えます。ただ一人世俗の人である医者は、最初の頃こそ、枢機卿たちの精神的な相談にのったりしていましたが、そのうち一緒にトランプに興じ、英ブックメーカーが公表する各枢機卿の法王へのオッズを比較し(ちなみにメルヴィルは90倍)、果ては出身地域対抗のバレーボール大会まで企画...。
余興を楽しむお気楽な枢機卿たちと、重責を感じながら街をさまよう新法王との対比が素晴らしかったです。
ラストは予想しなかった展開で、ある意味衝撃的でもありましたが、だからこそよけい、ありふれた映画と一線を画す良作だと思えました。「カイエ・デュ・シネマ」で評価されたのも納得です。
法王メルヴィルを演じるのは、フランス映画の重鎮ミシェル・ピッコリ。出演作には、「パパラッツィ」でも描かれた「軽蔑」や、「美しき諍い女」などがあります。また、コミカルな精神科医は、本作の監督でもあるナンニ・モレッティです。
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