路上のソリスト
才能のあるチェリストだったのに、統合失調症のためにジュリアードを退学、ホームレスとなっていたナサニエルのことを、偶然知り合ったLAタイムズの記者ロペスが記事にしたことから、ナサニエルの生活が変わっていきます。
ここにはまず、統合失調症という大きな問題が存在します。私はこの病気について詳しく知っているわけではありませんが、こんなに普通に他人とコミュニケートできるものなのでしょうか? 私の中では、とめどなく一人でしゃべっているだけ、というイメージだったのですが。それとも、それは自閉症だけ?
とにかく、実話に基づくストーリーなので、ロペスがナサニエルと仲良くなり、彼の援助を申し出たのは事実で、どこまで手を出すかという葛藤はとてもよくわかりました。あまりに環境を変えたり、病気の発症・悪化の原因ともなった出来事を再現させてしまったら、意味はないわけですから。
ロペスが、プロのチェロ奏者クレイドンの勧めを受けて、ナサニエルのリサイタルを開こうとした時に起こるトラブルは、その辺りの難しさを表していました。逆にナサニエルがロペスに近づきすぎて、責任が重くなりすぎてロペスが抵抗する時もありました。
タイトルの「ソリスト」は、もちろんナサニエルのことを指すわけですが、一人の、孤独な、という意味では、ロペスにも当てはまると思いました。離婚し、子供とも疎遠で、一人ぼっちのロペスが、やはり孤独だったナサニエルと出会ったとき、それはロペスにとっても、人生の転機、再生へのきっかけだったのではないかと思います。
記者ロペスを演じるのは、「シャーロック・ホームズ」のロバート・ダウニー・Jr。私は、初期の「ワン・モア・タイム」や「チャーリー」の頃、才能ある彼が大好きだったのですが、その後ヤク中で身を持ち崩してしまい、もう再起は無理かな、と勝手に思っていました。
「アリーmyラブ」のラリー役もよかったのですが、「グッドナイト・グッドラック」や「ゾディアック」ぐらいから、本当に完全復活を遂げたようで、彼の才能が埋もれずに済んで良かったです。でも、「アイアンマン」なんかやっちゃうのはどうなのかな? まだ見ていないので批評はできませんが、私の中では彼のイメージじゃなくって。でも、続編が作られるくらいだから、きっとよかったのでしょう。そのうち見たいと思います。
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