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2011年6月 3日 (金)

ブラック・スワン

いやー、すごかった、怖かったです。結末は言いませんが、「そういう展開でしたか!」と思ってしまうラストでした。

舞台はバレエの世界。新解釈・新振付の「白鳥の湖」で、白鳥と黒鳥を一人のダンサーで演じることになり、監督のトマ・ルロワは、ベテランのプリマではなく、新しいプリマを選ぶことにします。技術は素晴らしいものの清純なニナは、最初、男を誘惑する妖艶な黒鳥を演じるのは難しいと判断されますが、彼女はトマに直談判し、プリマの座を射止めます。しかし、黒鳥を演じるため、トマが要求することに答えようと、だんだん自分を追い込んでいきます。


芸術においては、努力で一定のところまで行く人と、本当に才能があって、本能のようにできてしまう人がいると思うのですが、私は最初、ニナは前者だと思っていて、所詮才能がなければ黒鳥は無理なのよ、と思いながら見ていました。必死でトマについていこうとする彼女は見てて痛々しく、いい加減あきらめたらって言いたくなりました(もちろん、それじゃ映画として成り立たないけど)。


でも、彼女は潜在的に黒鳥の要素を持っていて、それをトマは見抜いたんですね。本当に憶病でおとなしかったら、そもそも直談判なんてしないでしょうし、彼女とポストを争うライバルのリリーに誘われついて行くのも、黒鳥そのもののような彼女から得たいものがあってのことだったと思います。負けず嫌いのところは黒鳥の素質ありですよね。

ただ、それを阻んでいたのは、母親の存在。自身もバレエダンサーだった母親は、子供に自分の夢を託すあまり、過保護であると同時に威圧的でもあり、ニナを極度にコントロールしています。なので、ニナは常にびくびくして、すぐ謝るという性格になってしまいました。練習は欠かさないけれど表現力に乏しいダンサーになってしまったのは、ひとえに母親のせいです。

ネタばれにはならないと思うのですが、ちょっと突っ込んで話すと、私は勝手に、全部ニナの幻覚と被害妄想の話かと思っていました。でも、ところどころ、現実のこともあり、何がどこまで現実なんだか、ニナ同様にわからなくなってきました。だからこそ、ラストで、どこが現実だったのかが明らかになった時に、「そういうことか」と思ったわけです。

憶病なニナが現実と幻覚の間をさまよう様子を演じたナタリー・ポートマンは本当に素晴らしく、アカデミー主演女優賞も納得がいきました。
周りの俳優もとてもよくて、母親役のバーバラ・ハーシーもそうだし、特にウィノナ・ライダーは、出番が短いながら、強制的に引退させられるベテランプリマ役で強烈でした。彼女を見たせいもあって、ニナとリリーの関係は、まじめなウィノナと自由奔放なアンジーが対照的な「17歳のカルテ」を思い起こさせました。

フランス人監督役のヴァンサン・カッセルは、とてもいい役者なのですが、申し訳ないけれど、彼を見るとどうしても、奥さんのモニカ・ベルッチが頭に浮かんでしまいます。 それを除けば、よかったかな?

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