2021年6月13日 (日)

アストリッドとラファエル

よくある刑事と部外者の相棒による犯罪捜査ドラマですが、両方とも女性っていうのが現代的だし、片方は自閉症というのも目新しかったです。

確かに高機能自閉症の人たちは賢くて目の付け所も違うし、捜査能力に秀でていそうですよね。問題は人間関係の構築ですが、ここではラファエルがうまく対応し、アストリッドをサポートしていました。

とはいえラファエルも自閉症に詳しいわけでなく、支援グループの人や、アストリッドが懇意にしている日本人のムッシュー・タナカから教わっていました。

アストリッドは本当に日本の物が好きみたいで、タナカさんの日本商品の店に通い詰めるだけでなく、パズルにはまったきっかけは、父親からもらった寄木細工の秘密箱!

そんな彼女に私もどんどん魅かれました。ラファエルだけでなく、最初は自分のミスを指摘されて反感持ってた検視官のフルニエでさえ、すっかり彼女の評価を変えましたものね。

アストリッドの知識と洞察力を披露するドラマなので、証拠の発見やトリックの見破りに主眼のある本格捜査なのも、このドラマを気に入った理由の一つです。


Astrid et Raphaelle」(2019~2020年フランス)

2021年6月 8日 (火)

インフェルノ

先月「わが心臓の痛み」を読んだのに続き、やはり映画化原作であるダン・ブラウンのこちらの本を読みました。

映画を見たときに記事も書いたのですが、4年ぐらい前なので細かいところは忘れていたし、ラストがだいぶ変わっていたので驚きました。

主人公のラングドン教授はどうしてもトム・ハンクスを思い浮かべ、彼と一緒に逃亡するシエナはフェリシティ・ジョーンズをイメージしましたが、その他の登場人物が俳優を特定できなかったのは、設定が微妙にずれていたからなんですね。

それに、私が好きな俳優ベン・フォスターが映画で演じたゾブリストは、原作の中では違う印象で、彼を念頭に読み進めることができませんでした。

映画を見た時にはなかった要因として現在のコロナ禍があり、今読むと感染の怖さとかその裏にある悪意が妙にリアルで、このコロナ騒ぎを見て利用価値を見出す人がいなければいいなと思ってしまいました。

また、昨年見た映画「9人の翻訳家」は、この「インフェルノ」翻訳時に実際に行われた隔離が元になっていると聞いたので、この内容(結末)なら外に漏らしたくないのも納得だと考えながら読みました。


「Inferno」(ダン・ブラウン著・角川文庫)


2021年5月30日 (日)

マンハント:謎の連続爆弾魔ユナボマー

1シーズンごとテーマが変わる(「アメリカン・クライム・ストーリー」など)はアンソロジードラマと呼ぶことを最近学びましたが、これもそんなドラマの一つで、第1シーズンはユナボマーについてです。

当然リアルタイムで記憶していますが、名前だけやたら聞いていた割に、具体的にどのように解決されたのかは知らずにいたので、とても面白かったです。

他に何の証拠もなく、彼が出した声明文や主義主張を研究し、知人に似たような文章を書いたり主張をしたりしている人がないか情報を募ったんですね。それで犯人が見つかったのもすごいけれど、主人公の捜査官フィッツが、上司の賛同を得られなくても、その手法に固執し続けられたのもすごいと思いました。

解決にこれだけ時間がかかったのは、FBIがルビーリッジとウェーコという二つの事件の失態で世間に叩かれていた折で、下手に動いて批判の矢面に立ちたくないという心理が働き、慎重な判断しか下そうとしなかったという状況も災いしたのでしょう。

ユナボマー=テッド・カジンスキーの視点で描かれた第6話も興味深くて、賢すぎて周囲から浮いていた幼少期や、大学で心理テストの実験台にされて精神を病んだのではという説など、同情したくなる側面もありました。

逮捕されて結果オーライだったけれど、ほんのちょっとした偶然の重なりに左右されたようにも見え、事件がそれ以上続かなくてほんと良かったと思います。


Manhunt:Unabomber」(2017年アメリカ)

2021年5月29日 (土)

カリンカ

この事件のことは全く知りませんでしたが、実話なんですね。

1970年代当時、ドイツ人が罪を犯したと思われても自国民を守ってフランスに引き渡さないなんて風潮があったとは。性犯罪は厳しく取り締まる今なら考えられないと思うけれど、実際はどうなのかな。

娘を亡くした同じ身の上ながら、必死で追及しようとする父親と、目を背けてとにかく忘れてしまいたい母親の対比が、興味深いと思いました。男女の行動の差なのか、それとも母親は犯人の男性を招き入れた罪悪感みたいなのもあったのかもしれません。

主人公が、たとえ犯人と確信していたとしても、何の証拠もないうちに中傷のビラを撒いたりするのは行き過ぎの気もしましたが、そこまで追い詰めたからこそ結果的に余罪が明らかになってチャンスができたのかなとも思うし、難しいところですね。

犯人がドイツ人でも医者でもなかったら、もう少しスムーズに事件を解決できて、主人公がフラストレーションを感じることもなかったのでしょうが、どんどん妄執的になって2009年の事件を起こした時にはさすがに驚きました。
74歳ですよ! 時効ぎりぎりで焦ったっていうのもあるでしょうが、ほんと執念だなと思いました。


Au Nom de ma Fille」(2015年フランス)



2021年5月23日 (日)

博士と狂人

かのオックスフォード英語辞典の編纂に変わった二人の話です。実話なのが驚きで、だからこそ映画にはもってこいの題材とも言えます。

なかなか進まない辞典の編集人として新たに抜擢されたのは、学校は14歳で辞め学士号も持っていない、独学で言語学の優れた知識を習得したマレー氏。

それだけでもびっくりですが、辞典作成に一般の人々の助けを借りることになり、そこで協力したのが殺人罪で精神病棟に収監されている人物。ただ、囚人なので時間はあるから、手伝う気さえあれば役に立つのは分かる気がしました。

それまで全単語をまとめた辞典がなかった時に、一から作るのはそれだけで大変なのに、時代によって意味が変わるからと、その出典(引用)までも加えるという野心的取り組みで、気の遠くなるような作業だったことは容易に想像がつきます。

マレー氏を採用するまでにすでに20年も経っていたことを考え合わせると、完成に漕ぎ着けただけでも偉業と言わざるを得ません。

最初キャストを聞いたときに、ショーン・ペンが博士でメルギブが囚人かと勝手に憶測していましたが、映画を見た後では、この配役で合っていたかもと思います。


The Professor and the Madman」(2018年イギリス・アイルランド・フランス・アイスランド)

2021年5月16日 (日)

消えた声がその名を呼ぶ

先に見た「The Promise」に続けて、同じアルメニア人大虐殺をテーマにした映画を見ました。
あちらが、虐殺前の豊かな生活から徴兵され、逃げ、その後戦うまでを描いていたのに対し、こちらは迫害の話は最初のみで、生き延びた後に家族を探す話でした。

とにかくその執念が凄かったです。死んだと思っていた娘二人が生きていると知って、トルコからレバノンぐらいならともかく、キューバに渡ったことがわかって船員になって追いかけ、更にはアメリカに移動したと聞いて道路工事の作業員になって追いかける、まさに「母」ならぬ「娘をたずねて三千里」状態。

しかも、主人公がトルコで徴兵された後、喉を切られて殺されかけたので声が出ないものだから、捜索はさらに困難を極めます。
キューバ当たりで諦めても仕方ないと思うけれど、親たるもの、希望がある限り止められないということなんでしょうね。

父親役のタハール・ラヒムが、苦労して年月を経ても若い外見のままなのが、リアルさに欠けて気になりましたが、ラストで突然老けた感じになったのも不思議でした。

The Cut」(2014年ドイツ・フランス・イタリア・ロシア・ポーランド・トルコ)

The Promise/君への誓い

先日バイデン大統領が正式認定していた、アルメニア人大虐殺を描いた映画を見ました。

オスマン帝国って世界史で習ったけれど、13世紀末からずっと続いた国だったんですね。最盛期は17世紀らしいですが、衰退する国の威信をかけた結果がこの事件だったのだと分かりました。

そのやり方はまるでナチスのユダヤ人迫害と同じようで、第1次大戦中に協力関係にあった2国の類似性を見た思いでした。

宗教や考えの違いがあったとはいえ、長年同じ地域に暮らしていたのに、突然敵視され、家を追われ、虐殺されるなんて酷すぎです。
ただ悲しいことに今も世界各地で、違いを受け入れず敵対する風潮があり、これが珍しいと言えないのが残念です。

オスカー・アイザック扮するミカエルは架空の人物なのかもしれませんが、モーゼ山に立てこもって軍と戦った人たちがいたのは事実のようで、必死で生き残ろうとした彼らの勇気を讃えると共に、この虐殺で亡くなった150万ともいわれるアルメニア人の冥福をお祈りします。


The Promise」(2016年スペイン・アメリカ)

2021年5月15日 (土)

リチャード・ジュエル

現在ドラマ「マンハント」のシーズン1を見ているのですが、次のシーズンがリチャード・ジュエルと聞き、まずはこちらの映画を見てみることにしました。

アトランタ五輪の傍らで起きた爆弾事件のことは、ほとんど記憶になくて、ましてやリチャード・ジュエルのことは、クリント監督の映画化を聞くまで知りませんでした。

ジュエルは警察官になりたがっていたので、確かに英雄目的の犯人像に一致しますが、それだけで物証もないのに、どんどん犯人と確信されていくのは怖いなーと感じました。

メディアも第一報は、FBIがジュエルを捜査していると報じただけで、犯人と断定したわけでもなかったのに、第一発見者=爆弾魔の衝撃と共に情報が独り歩きして、ヒートアップしていく様子が本当に恐ろしかったです。

ジュエルが余りに可哀想だったし、いっそ爆弾なんか発見しなければよかったと思っちゃいそうなんて考えていたら、案の定、後半でジュエルが「次に爆弾を見つけた人が通報しなくなる」と言っていて、やっぱりそうだよねーと。

最後に無実が証明されると分かっていても、FBIの横暴さやメディアに踊らされる状況が、見ていてハラハラしました。

サム・ロックウェルが相変わらずグッドで、この人はホント最近いい役づいてるなと思いました。絶対欲目だけじゃないですよね!


Richard Jewell」(2019年アメリカ)

2021年5月10日 (月)

わが心臓の痛み

ゴールデンウイークにブログの整理をしていたら、本カテゴリーをすっかり放置していたことに気づき、ちょうど読んでいるのが映画の原作本だったので、記事にすることにしました。

マイクル・コナリーは以前にも「リンカーン弁護士」の時に記事を書きましたが、その後ボッシュ刑事の第1作から順に読み進めており、ようやくこの本まで到達しました。

何でこの邦題なのか疑問で、映画タイトルにもなった「ブラッド・ワーク」のほうが、主人公テリーがFBI分析官として所謂「血の仕事」をしていたことや、後半で明らかになる二重の意味合いを考えてもいいと思うのに、不思議な選択でした。

ずいぶん前ながら映画を見ていたので、テリーはやはりクリントの姿を念頭に読んでいました。
本を読んだ後で映画ももう一度見てみましたが、犯人の設定が少しだけ変わっていて、1回きりの映画としてはこれで良かったのかもしれませんが、シリーズものの原作としては、この展開にはしたくないよなーなんて思いました。

映画を1回目に見た時の感想を映画ノートから拾ってみたところ、当時はマイクル・コナリーの原作も知らず、純粋に楽しめたようで、「あっという間に引き込まれて1時間、更に気づいたら1時間経っていた」とありました。

次はダン・ブラウンの「インフェルノ」を読んでいるので、こちらも読み終わったら感想を書きたいと思っています。


「Blood Work」(マイクル・コナリー著、扶桑社)

2021年4月29日 (木)

スペシャルズ!

お気に入り俳優レダ・カテブがヴァンサン・カッセルと共演した実話映画化作品を見ました。

コワモテなブリュノが自閉症の子供相手に優しい態度で接するというギャップが良かったし、マリクのほうは子供だけでなく青年たちの職業訓練もやっていて、社会に貢献している2人が本当に素晴らしいと思いました。

一方、資格のないブリュノが子供の受け入れを断らないがために、定員オーバーで当局の査察が入り、そもそも公的機関が正しく機能していればブリュノが受け入れる必要もないのに、フランス社会の抱える矛盾を浮き彫りにしていました。

行政の正式な認可を受けた組織だけで回せれば理想なのでしょうが、そんなきれいごとで済まないのが実情なのでしょうね。
日本の状況も全く知らないのですが、同じようなことになっていないのを願いばかりです。

エンドクレジットの映像は、実在の人たちなんですね。ヘッドギアをつけたり、馬と触れ合ったり、食事を提供してくれる人たちも皆モデルとなる人がいたことがわかりました。


Hors Normes」(2019年フランス)


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