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2015年6月13日 (土)

野性の夜に

今日紹介するお薦めフレンチシネマは、エイズを題材にした1992年の作品です。

1986年。カメラマンのジャンは、CM撮影のオーディションでローラに出会います。彼女に魅かれる一方で、バイセクシャルの彼はラグビー選手のサミーとも関係。ジャンはローラに、自分は男も好きだと打ち明けますが、ローラはそんな彼を受け入れ、2人は付き合い始めます。しかしジャンは、エイズであることをローラに隠していました。


エイズをテーマにした作品は、以前お薦めトップ5で紹介した「フィラデルフィア」などもありますが、あちらが社会的な問題提起って感じなのに対し、こちらはとてもパーソナルな映画です。
監督で主演も兼ねるシリル・コラールが、彼の自伝的小説を映画化したものだから当然ですが、怖いくらいのリアリズムと、身を切られるような痛さも感じます。


社会的なエイズだからといって、ローラを傷つけるジャンの行動を正当化はできませんが、病魔に蝕まれ、死が目の前にあってもなすすべのない歯がゆさに苦悩し、刹那的に毎日を生きる姿は胸を打ちました。

ローラの方は、最初のうちはその一途な愛に「若いなー」と思いつつ、彼女の情熱が羨ましくもありましたが、どんどん精神的に追い詰められてストーカーまがいになっていく様子はすさまじかったです。

ローラもサミーも、磁石のようにジャンに吸い寄せられ、離れてもまた戻って来てすっかり虜になり、奇妙な三角関係を受け入れているのが不思議でしたが、自分の運命に抵抗しながら懸命に生きるジャンが、それほど魅力的だったということなのでしょうね。

この映画を初めて見た当時の私は、すっかり触発され、コラールのもう一つの小説である「Condamné Amour」や、やはりゲイでエイズの作家エルヴェ・ギベールの本を読んだりして、その世界にどっぷりハマっていたことを思い出しました。

本作はこの年のセザール賞で高く評価されましたが、小説家で映画作家で劇中で歌も歌う多才でハンサムな芸術家のコラールは、残念ながらこの映画の翌年、エイズのため35歳で亡くなりました。

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