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2011年6月15日 (水)

いのちの戦場

副題に「アルジェリア1959」とありますが、「ジャック・メスリーヌ」でも登場したアルジェリア戦争を舞台にした話です。
新任のテリアン中尉が、アルジェリア戦争の前線に派遣され、ナイーブで倫理観も強かった彼が、だんだん冷酷かつ狂気さえ感じさせる人に変わってくる様子を描いています。

大体のストーリーを聞いていたので、もっと早くから、戦争の影響でおかしくなるのかと思っていましたが、捕虜を拷問するのを完全拒否し、敵によるひどい虐殺を目の当たりにしても、意外と理性を保っていて、すごいなと思いました。
そんな彼を変えたきっかけとなる事件があるのですが、これは「ジャック・メスリーヌ」にも通じる出来事で、ジャックの犯罪は正当化できないけれど、やはり戦争が彼の人生を狂わせたと言えるのだろうなと改めて感じました。

そしてその事件を含む過酷な48時間作戦を機に、中尉は理性から狂気への境を越えはじめ、ヤワだった彼が強く冷酷になっていきます。せっかく休暇をもらっても、心が折れてしまった彼は家族に対面することもできず、結局戦場に戻ってしまう程でした。

中尉を支える部下の軍曹がとてもよく、拷問や銃殺に抵抗のある中尉に理解を示してカバーしたり、ある意味主役とも見える人でもありました。常に冷静な判断力を見せる彼が時折する奇行も、中尉とは別な形の狂気と言えなくもありませんでした。

それほど、この戦争は、目的を見出せない、大義を感じられない戦争だったのだろうと思います。ある意味、アメリカに於けるベトナム戦争と一緒で。
原題の「L'ennemi Intime」は、近しい敵、という意味ですが、これからも分かるように、前の戦争では共に「フランス」として戦ったアルジェリア人が、ここでは全くの敵になってしまっているという、往々にして起こる戦争の理不尽さを描いています。

私自身は、無意識に気持ちを一歩引きながら、この映画を見ていました。でないと、悲惨な状況に対処できないからだと思います。私は犯罪捜査ドラマやフィルム・ノワールを好んで見るので、残虐性には強い方だと思っていますが、リアリティ溢れる戦争映画が、残虐シーンを一番直視できない気がします。

中尉を演じるブノワ・マジメルは、この映画の発案者でもあるそうです。まだ若い彼が、どうしてこの戦争を描こうと思ったのかはわかりませんが、力を入れているだけあって、「ピアニスト」以上に渾身の演技でした。今後の彼にも期待したいです。

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